診療内容

地域の皆さまに健康で快適な生活を送っていただくために、幅広い診療サービスを提供しています。
経験豊富な医師とスタッフが、丁寧で温かな対応を心掛け、患者さま一人一人に適切な診断と治療を行います。

診療内容
Medical Information

脳神経内科;主に神経難病の診断・治療を行います。

神経難病とは

原因が不明で治療法が確立されておらず、経過が慢性のために肉体的だけでなく精神的にも経済的にも負担の大きな神経疾患です。
主な神経難病としては、

  1. パーキンソン病
  2. 進行性核上性麻痺
  3. 大脳皮質基底核変性症
  4. 多系統萎縮症
  5. 脊髄小脳変性症
  6. 筋萎縮性側索硬化症

1.パーキンソン病(PD)

薬物療法が非常に有効ですので、早期の診断と治療が重要です。
動きが遅くなったり、手足が震えたり、体が硬くなり、歩行も小刻みになります。
治療をしないで進行すると、体の動きがさらに悪くなり、転倒したり、歩行も困難となります。
このような運動症状だけでなく、便秘、嗅覚障害、睡眠障害、自律神経障害、精神症状などの非運動症状も出現します。

運動症状の原因
αシヌクレインという蛋白質の異常蓄積によって、中脳黒質のドパミン細胞が壊れ(図1)、それによって線条体でのドパミン濃度が低下します。ドパミンは主に運動を制御する神経伝達物質であるので、その制御ができなくなり振戦、動作緩慢、筋強剛、姿勢保持障害などの運動症状が出現します。

図1 黒質のドパミン細胞(メラニン含有)が変性し、パーキンソン病では黒質が白くなる
非運動症状の原因
αシヌクレインが中脳黒質に出現する10-20年前に腸管や嗅球(嗅覚情報を処理する)に出現し、便秘や嗅覚障害を引き起こします。αシヌクレインは腸管や嗅球から脳に伝わり、神経細胞を障害し、自律神経障害、嚥下障害、うつ、精神症状などの非運動症状が出現します。(図2)。

図2;αシヌクレインの出現過程

治療

現在根治療法はありませんが、①薬物療法、②リハビリテーション、③デバイス療法、④今後の治療があります。

①薬物療法

運動症状は線条体でのドパミンの低下によりますので、ドパミン補充療法が非常に有効です。
早期と進行期では症状が異なりますので、治療方針も異なります。

  1. 早期の治療:早期治療は運動症状改善を目的とします。主体はL-ドパ療法です。L-ドパは脳内に入るとドパミンに変換され、少なくなったドパミンを補充します。非常に有効な薬剤ですが、効果の持続が短いという欠点があります(ドパミンの半減期は約90分)。それを補うため、ドパミンやL-ドパの分解を抑制するMAOB阻害薬やCONT阻害薬などを併用することがあります。
  2. 進行期の治療:パーキンソン病は進行しますと、運動症状だけでなく、運動合併症(症状の日内変動やジスキネジア)が出現することがあります。これに対してMAOB阻害薬やCOMT阻害薬だけでなく、ドパミンアゴニスト、ゾニザミド、イフトラデフィリン、アマンタジンなどの薬剤を、症状に合わせて併用して対応します。いづれにしても、薬との付き合い方が重要で、自分に合った薬を使うことが重要です。一生服用するのは憂うつと思われる方は、薬とは思わすにサプリメントと思って下さい。実際にパーキンソン病の治療薬の主体は、足りなくなったドパミンを補っているので、サプリメントなのです。

②リハビリテーション

早期から進行期のすべての病期で有効です。
なるべく体を動かし、無理しない程度に運動する習慣をつけることが重要です。


③デパイス療法

重度のウエアリングオフや不随意運動のため、薬物療法でコントロールができなくなった時には、脳深部刺激療法(いわゆるDBS)、L-ドパ・カルビドパ経腸用液療法、L-ドパ・カルビドパ水溶液(ヴィアレブ)持続皮下注法があり、患者様によっては非常に有効です。当院では上記デバイス療法(DBSはメドトロニック社)の調整も行っております。


④今後の治療

現在さまざまな新らたな治療法が開発されつつあります。

  1. ドパミン細胞の再生治療
  2. 遺伝子治療
  3. αシヌクレイン標的薬(αシクレインの蓄積を防ぐ)

などがあります。
まだ治験中や開発途中ですが、非常に期待できると思われます。


2.進行性核上性麻痺

パーキンソン病(PD)と同様に、動作緩慢、筋強剛、歩行障害がみられます。
しかしPDとは異なり、病初期からすくみ足や転倒傾向がみられます。眼球も下方に動かなくなります(徐々に全方向に動かなくなります)。進行しますと嚥下障害(飲み込みが悪くなる)、構音障害(しゃべりにくくなる)がみられます。進行はPDより速いのも特徴です。
また、上記運動症状だけでなく、注意力障害、人格や気分の変化、健忘などの精神症状がみられます。

原因

タウ蛋白という物質が脳内に異常蓄積して、神経細胞を壊します。

治療

脳内のドパミンが減少していますので、L-ドパはある程度期待できますが、一般的にPDほど効果はありません。

嚥下障害が進行すると、誤嚥性肺炎のリスクが高くなり、胃ろう増設も検討することがあります。

早期からのリハビリテーションがある程度有効ですので(バランス、歩行、嚥下に対して)、積極的にリハビリ導入を検討します。


3.大脳皮質基底核変性症

左右差の著しい筋強剛、無動などのパーキンソン症状で発症し、感覚障害や失行(麻痺はないのに決まった動作ができない)などの大脳皮質症状がみられます。PDより進行が早く、L-ドパなどの薬の効果が乏しいのが特徴です。

原因

タウ蛋白という物質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を壊します。

治療

一般にL-ドパの効果は乏しいですが、患者さんによってはある程度効果がありますますので、試してみる価値はあります。
身体が徐々に動かなくなるので、廃用性を防ぐために、早期からのリハビリテーションが必要です。


4.多系統萎縮症

歩行がふらつくようになり(小脳症状)、身体が硬く動けなくなり(パーキンソン症状)、頻尿・排尿困難、起立性低血圧による失神(自律神経障害)がみられる疾患です。PDと脊髄小脳変性症が合併したような症状がみられます。
注意しなくてはいけないことは、声帯外転麻痺がおこり、呼吸ができなくなり突然死することがあります。また、食後や起立時に血圧が下がり、失神することもしばしばみられます。

原因

αシヌクレインというたんぱく質が脳内に異常蓄積して、神経細胞を壊します。

治療

運動症状に対して、L-ドパの効果はあまり期待できませんが、起立性低血圧や排尿障害に対して薬物療法は期待できます。

転倒や血圧変動に気をつけながら、早期からリハビリ(歩行訓練、嚥下訓練)がある程度有効です。

声帯外転麻痺がおこると、息を吸う時にぜーぜーします(吸気時喘鳴)。突然死を防ぐために気管切開が必要です。

5.脊髄小脳変性症

小脳や脊髄の神経細胞が徐々に障害され、ふらつき、歩行障害、構音障害、嚥下障害などが出現・進行します。遺伝するタイプと遺伝しないタイプがあります。症状の進行は個人差があります。2,3年で車いすになる方もいれば、10年たっても自力歩行可能な方がいます。

原因

遺伝性は、さまざまな遺伝子の異常によって発症しますが、遺伝しないタイプは原因不明です。

治療

根本治療はありませんが、セレジスト(内服薬)はふらつき改善作用がありますので、試してみることは必要です。またふらつき、嚥下障害、構音障害に対してはリハビリが期待できます。


6.筋萎縮性側索硬化症

脳脊髄の運動神経が徐々に障害され、全身の筋肉が萎縮し、筋力が低下する疾患です。進行すると、歩行障害、嚥下障害、呼吸障害が起こります。進行は個人差がありますが、呼吸障害が出現するまでの期間は、筋力低下の出現後1から3年くらいです。眼球の動きや排便・排尿の機能は比較的保たれます。

原因

不明ですが、神経伝達物質の1つであるグルタミン酸の代謝の異常などが考えられております。また、患者さんの5-10%に遺伝子の異常がみられます。

治療

本治療はありませんが、リルゾール(内服薬)が呼吸障害の出現までの期間を延長させる効果があります。またラジカット(点滴と内服)が進行多少遅らせる可能性があり、試してみることは必要です。

嚥下障害が進行したら、胃ろうや点滴で栄養補給することができます。呼吸障害が進行したら、人工呼吸器を使用することができます。

手足が動かなくなると拘縮がおこりますので、早期からのリハビリは重要です。


一般に神経難病は慢性に進行し、患者様は長期療養が必要となります。
少しでも良い状態を保つためにも、在宅療養が重要です。通院が困難になりましたら、
訪問看護、訪問リハビリテーションや訪問診療などの活用が重要です。

これら神経難病は、現在根治療法はまだありませんが、遺伝子治療や再生医療などの研究が進んでおります。
今後さらに良い治療法が出てくる可能性が十分あります。

もっとも重要なことは、希望をもっていただくことです。
更なる治療ができるまで、うまく病気と付き合うことが大切です。

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